日曜日にコンフェデ杯の決勝戦ドイツ対チリを観戦した。グループリーグではドイツはやや守備を重視した陣容でチリと1-1で引き分けている。これまでの試合で多くのテストを行ったヨアヒム・レーヴであるが、今日は予想通り現時点でのベストメンバーと思われる陣容でチリに挑んだ。戦前の予想ではややチリが有利との見方が強く、私もそのように見ていた。
試合が始まるとチリは例によっていきなり猛攻を仕掛け、ビダルを中心に素早いパス回しと圧倒的な走力でドイツを圧倒した。ドイツの守備陣は必死の防戦で何とか最後の所で踏ん張るが、ボールを奪い返してもすぐにチリの鬼のようなプレッシングでボールを失い、再び攻め込まれる。ドイツはまさに防戦一方の状況に追い込まれ、殆ど攻めの形を作れない。必死の守備と運にも助けられ何とか失点は免れる。
しかし、前半20分まで 防戦一方のドイツは誰も予想だにしなかった形で先制する。自陣ゴール前で緩慢なプレーをしたマルセロ・ディアスからヴェルナーがボールを奪いキーパーと1対1となり、このパスを中央で受けたシュティンドルが無人のゴールにボールを流し込んだ。
そもそもチリ陣内にボールが来ることすら稀な試合展開だったので、この先制点には誰もが意表を突かれただろう。チリしてみればまるで悪い冗談のような失点でガックリきた筈だ。その後チリは気をとりなおして再びドイツ陣内に攻め込むが、やや疲れも出て来たのか30分過ぎ頃からペースが落ちて来た。ここからドイツは効果的にカウンター攻撃を繰り出すようになり、チリのゴールを脅かした。
後半が始まって最初にチャンスを得たのはドイツ。ドラクスラーがドリブルでチリの守備陣を抜き去り決定的なシュートを放つが、これは惜しくも外れた。チリには明らかに疲れが見え、前半ほどの激しいプレッシングをかけることが出来ずドイツが試合をコントロールし始める。
チリは時間が経つにつれ荒っぽいプレーが増え、後半はサッカーと言うよりも格闘技といった方が良さそうな肉弾戦の様相を呈して来た。ハラがヴェルナーの顎に肘打ちを食らわせたのはビデオ判定で何故かイエローで済んだが、本来明らかなレッドだろう。
一方のドイツもチャンが股に挟まったボールを抱えこむという、どう見ても非サッカー的な行為で笑わせてくれた。チリは終盤何度かドイツのゴールを脅かしたが、GKのテア・シュテーゲンは落ち着いた反応でこれを凌ぎ、ドイツがそのまま1-0で勝利した。
後半はサッカー的な要素の少ない荒れた試合となったが、総じて言えば両チームとも勝利に対する執念を見せた好試合だった。最近マンネリ化しつつあったドイツ代表の試合で、これ程の白熱した戦いを見る事が出来たのはファン目線から言っても明るい材料であり、代表戦の価値を再確認させてくれた。
監督のヨアヒム・レーヴからしても今大会は大満足だったに違いない。キャプテンを務めたドラクスラーをはじめこれまで代表で主力でなかった選手も今回の優勝で大きな自信をつけただろう。特にチリの猛プレスを経験したドイツの若手DF陣にとって今回は最高の学習機会だったはずだ。
また、今後のドイツを背負って立つと思われる若手も活躍した。特にゴレツカやヴェルナーといった選手は確実に2018年のメンバーに入ってくるだろう。28歳で初代表だったシュティンドルはそのオールラウンドかつ効果的なプレーで印象に残った。レーヴはFWには得点力に特化した選手よりもオールラウンドでクレバーなプレイヤーを好むので、シュティンドルには必ず今後もチャンスがあるだろう。
他にも期待のヴェルナーを含め、ドイツ唯一の弱点と思われるFWの人材でもある程度の候補が見つかった事は、2018年のW杯に向けてまたとない好材料となった筈だ。新たな発見も収穫も盛りだくさんで、ドイツにとってこれ以上ないほど全てが大成功だったと言えるコンフェデ杯だったと言える。