まだ続くと見られている、ドイツ統一以降最長の好景気

先週のニュースによると、ドイツは今年の上半期はまたもや過去最高の税収を記録し、2017年の経済成長率の予想も上方修正される見通しだ。これまでもドイツが好景気にある事は度々取り上げてきたが、ここまで長期間にわたり好景気が続くと予想した人はそう多くないだろう。基幹産業である車業界はVWスキャンダルや談合疑惑、ディーゼル車の締め出し、航空業界はルフトハンザのストライキに、つい最近はエア・ベルリンは破産申請をするなど、決して良いニュースばかりだった訳ではない。

しかし、今回のニュースを読む限り、現在のドイツは統一後最も安定的な好景気を謳歌している真っ最中だ。これまで慎重な見方をしていた専門家もこの好景気はしばらく続くとの見通しを示している。このドイツの好景気は例のリーマン・ショックの後の2009年から継続的に続いており、これ程の長期間に渡る好景気は1982年から1992年の10年間に渡る好景気以来との事だ。

この2009年以来の好景気がこれまでになく長期間に渡っている理由として、国内の消費や投資が充実している事が挙げられる。4ー6月の国内の設備投資は前期に比べ1,2%、内需は0,8%増加した。ドイツは長年にわたり貿易に依存した経済構造で知られていたが、その傾向が変わりつつあるかもしれない。つまり仮に貿易がちょっと沈んでも数年前から内需が伸びており、更に国内の設備投資も伸びてきたから、全体では簡単に沈まないようになっていると考えられる。

もっとも、貿易も決して悪くはなってない。トランプに難癖つけられながらも、世界経済が回復基調に乗っている事もあり輸出も増え、問題視されていた輸入も大幅に増えた。Ifo景況感指数も記録的な数値を叩き出しており、もはやほぼ非の打ち所がないような状況だと言える。何事につけて慎重なドイツ人にしては珍しく、本当の好景気はここから来るという声さえある程だ。

この異常な好景気は当然国家財政を潤しており、今年も既に183億ユーロの黒字を記録している。去年1年で257億ユーロの黒字だったので、今年は既に上半期でその7割を達成した事になる。本来国家財政が黒字になる事すら珍しいのと思うのだが、ここ数年は毎年記録的な数値を出しており、如何に景気が良いか物語っている。

更に失業率も記録的に低い数値で推移しており、今年の7月の求人数はドイツ統一後の最高値を記録した。失業率に関しては例年8月に一旦上がるらしい。大学などを卒業した者の多くは8月に一旦失業者として登録されるからだそうだ。また、今年の終わり頃には社会適応の為のドイツ語コースを終えた難民の多くが失業者として登録され失業率の数値に影響すると見られている。しかし、今後の景気の見通しが明るいので影響は限定的だと見られている。

さて、税収に関してこの記録的な数値が報じられる度に話題になるのが、この黒字分を一体何に使うべきかという事だ。これは来月に行われる総選挙のテーマの一つでもあるだろう。これだけ国家財政が潤っているのだから、国民は減税を望んでいるのかと思いきや、ネットのアンケートを見るとそうでもない。むしろインフラの充実に投資すべきだと言う意見が多い。こう言うところを見るとつくづくドイツ人は堅実だと改めて感じる。外国人はともかく、ドイツ人の多くは今の生活に満足しているという事でもあるのかもしれない。