パルトナッハ渓谷とはドイツの最南端、ガルミッシュ・パーテンキルヘン近くにある渓谷である。渓谷は山を切り取った細く狭いもので、上流から水が滝のように流れている。ハイキングをしながら自然のスペクタクルを体感出来るバイエルン屈指の観光地だ。
昨年私はへレンタル渓谷と呼ばれる類似の渓谷に行ってきて感激したので、兄弟分であるパルトナッハ渓谷にも行く事にした。へレンタルに比べるとパルトナッハは既に割と日本でも有名な観光地になっているようなので、わざわざ私が書く必要などないかも知れないが、折角行ってきたので感想を記しておきたい。
まずは車でガルミッシュ・パーテンキルヘンにある、スキースタジアムに向かう。ここに車を停めてそこから20分程度川沿いを歩いて行けば渓谷の入り口にたどり着くことができる。馬車も用意されているので、5ユーロ程で乗せていってくれる。私は渓谷からの澄んだ水が勢いよく川を流れているのを鑑賞しながら、徒歩で入り口まで向かった。
因みに、このスタート地点となるスキースタジアムも立派なジャンプ台があり、観光に値する。1936年の冬季オリンピックで利用され、現在でも毎年新年に世界大会が催されるのが恒例になっている。駐車場は十分に広いと記載してあるが、やっぱりというか、私が到着した時には満杯だった。最近はどんな大きな駐車場でも景気が良いせいですぐに満杯になる。私は少し離れたプールの駐車場に車を停めた。
入り口に到着すると、案の定長蛇の列である。私は去年のへレンタル渓谷の経験から服装や靴などしっかりと準備してきたが、割と軽装な観光客が多い。順番はすぐにやって来て5ユーロを払えば中へ入れる。
渓谷自体は700メートルとそれほど長くなく、道もへレンタル渓谷に比べれば平坦、景色の変化も少ないという印象だった。というわけで、私にはちょっと物足りない感じもした。ただこれはあくまで去年訪れたヘレンタル渓谷に比べればの話で、もちろん中の自然美と力は多くの人が鑑賞するに値する。夏でも渓谷の中は結構冷えるし、水も上から降ってくるので軽めのアウトドアジャケットがあれば十分だ。靴も特別でなくとも安定して歩けるものであれば問題ない。
渓谷を抜ければ大きな河原に出る。多くの人がここで昼食をとっており、私も持参のサンドイッチをそこで食べて昼食とした。このまま引き返して帰ろうかと思ったのだが、どうやら少し上まで登ればパルトナッハ高原と呼ばれる所にちょっとレストランがあるらしい。というわけで、そこで、一杯ビールを飲むべく登って行くこととした。
この高原までの道のりは、これまでとはうって変わって急な登り道となり、かなりきつかった。なるほど、ほとんどの人は河原から引き返すか、そこからちょっと散歩するぐらいにしている訳だ。30分ほど山登りをすると、例のレストランに到着し、ビールを一杯飲んだ。そこから眺めるアルプスの景色は悪くないが、やはりこちらもへレンタル渓谷の後に見た壮大な景色に比べればかなり見劣りする。まあ、汗をかいたあとにビールさえ飲めればそれで私は満足だ。
去年訪れたヘレンタル渓谷が余りにも私には鮮烈に印象に残っているためか、全体的にパルトナッハ渓谷はやや物足りない印象となった。しかし、それは必ずしも多くの人にとってネガティブではない。パルトナッハはヘレンタルより難易度が低く、誰でも手軽にバイエルンの自然を楽しめる優れた観光地だ。馬車を使って入り口まで行けば、子供でもやや足腰の弱い人でも楽しめる。価格も大人は5ユーロ、子供は確かその半額である。また、パルトナッハ渓谷は冬でも入ることが可能で、写真で見る限り凍てついた滝の神秘的な風景を鑑賞できそうだ。もう一度冬に行ってみるのも悪くないかもしれない。