日曜日にドイツ総選挙が行われた。 メルケル率いるCDU/CSU連合が支持を落としながらも、最終的に第1党に事はわかりきったことだったので、私の中での焦点は反難民、反移民を掲げるAfDがどれほど支持を集めるかという点だった。選挙前の予想ではAfDはCDU/CSU連合及び、SPDに次ぐ第3の勢力として国政に参加すると見られていた。そして結果から言えばその通りになった。
このような右派ポピュリスト政党が勢力を伸ばしているのはドイツに限った話ではないので、全く驚くようなことではない。とは言え、たった4年前に結党し、その差別的かつ他人への憎悪を煽るような発言で民衆の支持を得ようとする政党がそれなりの勢力を持って国政に影響を及ぼすようになると言うのは、ドイツの政治の歴史から言っても転換点になるだろう。
AfDが躍進している理由は一つではないだろうが、今回の選挙で最大の争点であった、移民、難民問題において、難民の受け入れに反対する唯一の政党であるからと考えられる。他に難民の受け入れに難色を示していたのはメルケル率いるCDUの姉妹政党であるCSUであった。
CSUは難民の受け入れ数に上限を設けるべきだと主張していたが、この主張は同胞であるメルケルのCDUと対立しそのトーンも下がっていった感があった。そのCSUは今回の選挙で11%も得票数を失っている。バイエルンではこれまでのCSUの支持者がAfDに鞍替えしたんだろう。
確かに、難民をはじめとした多くの外国人を受け入れると言うことは、多くのデメリットが存在する。ましてや、見た目も生活習慣も宗教も違い、言葉も全くわからないような人間が大挙して押し寄せてきたならば尚更だ。それを受け入れて自分たちが蔑ろにされていると感じれば、多くのドイツ人が我々のような外国人を歓迎しない状況になるのは不思議ではない。私はAfDのような政党を支持したいと一切思わないが、それを決めるのはドイツ人だ。我々外国人は選挙で決定したことを受け入れる以外にない。
しかし、 少なくとも我々外国人はAfDの躍進から、自分たちがどのようにドイツ人から見られているかよく意識しておいたが良いだろう。なぜならAfDはその発言や態度を見聞きする限り、単に少数派を蔑めたり、自分たちが上だという優越感や自己顕示欲に浸って満足するという抵レベルな欲求を満たす事で支持を集めようとする連中の集まりだからだ。今のところターゲットはイスラムだが、我々アジア人も外国人である以上多かれ少なかれ問題視されている存在であることは間違いない。
そしてこのAfDが今回の選挙で第3の勢力となった事で、ドイツの野党第一党になる可能性がある。つまりこれまで通り、CDU/CSUとSPDの二大勢力が連立政権を組めばそのような状況になる。そこでAfDが野党のボスになる状況だけは避けるべく、選挙後のインタビューでSPDは今回は連立政権に参加せず野党に回ると言っていたが、そうなると今度はCDU/CSU(黒)とGrüne(緑)とFDP(黄色)という、いわゆるジャマイカ連立しか可能性はなくなる。
しかし、この3党が連立するには相当な妥協が必要だと見られており、それはそれで複雑かつ厄介な状況になりそうだ。いずれにせよAfDが少数の抵抗勢力として存在しているうちはまだ良いかもしれないが、野党第一党として箔がついた状態になるとますますその下品な発言が影響力を持つ可能性があり、そんな状況だけは避けてもらいたい。