ドイツ統一の日 : ベルリンの壁はドイツ人の頭の中にまだ存在している

昨日10月3日はドイツ統一の日でドイツ全土が祝日であった。戦後東西に分断されたドイツだったが、1989年の11月9日にベルリンの壁が崩壊し、1990年のこの日に旧東ドイツが旧西ドイツに編入されドイツが正式に統一された。

そのドイツ統一から今年で27年目となり、当初は問題であった東西の格差も徐々に縮まっているとされている。私ら被雇用者が毎月給料から天引きされているSolidaritätzuschlag (連帯税=主に旧東ドイツ支援目的の税金)も数年のうちに廃止されると言われ、東西の経済的な格差は縮まっている事を窺わせる。

しかし、この間のZDFのアンケートによると、ドイツ人の半数が旧東ドイツと西ドイツの間には連帯よりも差異を感じるという結果が出た。しかも、このように感じるドイツ人は2年前よりも多くなっている。そのようにドイツ人が感じるのは、この間の総選挙で右派ポピュリストのAfDが躍進したのとも関連があるだろう。というのも、AfDほど反イスラム、反外国人という、単純で分かりやすく下品かつ差別的、攻撃的な主張で世の中を分断している連中はいないからだ。

そしてそのAfDが強い地域というのはドイツの中でもかなり隔たりがある。具体的には旧東ドイツでAfDは強く、得票率を地図上で見てみると旧東と旧西でほぼ真っ二つになっている。特にザクセンでは強力な支持を集めCDUを0,1%上回り最も票を集めた政党となった。

ザクセンは元々変な外国人排斥デモやネオナチの暴力事件が多い事で有名なので、やっぱりと思う所も大いにある。この間この方面に行った時にやたらと多くの極右系らしき看板を見かけ、正直私もやや不安を覚えた。まあAfDに投票する人=極右とは限らないが、そういう考え方に抵抗を示す人が少ない地域ではあることは確かだろう。

何故旧東ドイツでAfDに投票する有権者が多いのかは、このところ盛んにメディアで考察されており、それはざっと見た限りでも非常に複雑多岐にわたる理由がある。一般的にはAfDに投票した多くの人は実際には極右的な思想を持っている訳ではなく、既存政党に不満を持ち抗議の意味で投票していると言われている。

他にも東ドイツでは反ナチスの教育が西ドイツほど為されていなかったことや、昔ほどではないにせよ未だに経済的に旧西よりも状況が良くないこと、また一度彼らは国家が破綻しているのを体験しているので、外国人により自らの国が蹂躙されることに大きな恐れを感じているかもしれない。旧東ドイツの人間は外国人と接する機会も少なく、それが逆に不安を増長させているとも思える。実際、外国人の少ない地域ほどAfDの得票率が高いという結果がある。一般的には外国人の多い所ほど反外国人勢力が強いと思われがちだが、実際にはその逆である。

何れにせよ、昨今の右派ポピュリストの躍進で旧東と西の差異が再び際立ってしまうような状況になっている。東西ドイツが統一して27年となっても、ベルリンの壁はまだドイツ人の頭の中に存在しており、これはそう簡単に壊れるようなものではなさそうだ。少なくともそう言う意味で現在はドイツにとって喜ばしい状況ではないだろう。