日曜日に日本で行われた衆議院選挙特番で見せた小泉進次郎のインタビューが絶賛されている。例の池上彰氏のちょっと意地悪な質問にも余裕のある受け答えで切り返し、逆に池上氏を攻める場面も見せるなど、その器の大きさと頭の良さを垣間見せたと言える。まあ、ちょっと責められたぐらいで直ぐに逆ギレする日本の政治家がそもそもおかしいと思うが、確かに小泉氏には人を惹きつける魅力があるのかもしれない。そのイケメンぶりと、堂々とした態度、父親を彷彿とさせる話し方など、なかなかのカリスマ性を感じさせる。
そして、そのようなカリスマ性を持った若手政治家はドイツにも存在する。それは私の独断と偏見ではあるが、FDPの党首であるクリスティアン・リンドナーである。リンドナーは2013年の選挙でどん底だったFDPを再び先の総選挙で連邦議会へ押し上げた元実業家の若手党首である。右派ポピュリストのAfDの躍進ばかりが注目されるが、FDPの復活も忘れてはならないだろう。
FDPはリベラルを自称する小規模政党である。全体的な政策から見れば右派なのか左派なのか今ひとつ分かりにくい政党ではあるが、特色はその先進的な経済政策にある。今回の総選挙では社会のデジタル化と、官僚制の排除、事業の民営化など、基本的に国の介入を出来るだけ排除した自由経済的な政策を基本にしている。そう言う訳で起業家や高給取りのサラリーマンからの人気が高い。
結党以来ほぼ常に連邦議会での議席を獲得し、しばしば連立政権の一部としても長期に渡り国政に一定の影響力を維持してきた政党だ。2013年に得票率が5%に届かず結党以来初めて連邦議会での議席を失ったが、今年の総選挙での復活によりCDU/CSU、Grüneと共に形成する新たな連立政権の一部となる事が確実視されている。
そしてそのFDPの党首であるリンドナーであるが、1979年生まれで現在39歳、ちょっとワイルドなヒゲを生やした風貌で、それでいて知性や落ち着きも同時に感じられる。リンドナーは若くして自ら起業て失敗し、軍隊に入っていた経験もある。小泉進次郎が2世議員らしいスマートさを醸し出しているのに比べると、リンドナーは無骨で、叩かれて大きくなってきた打たれ強さを感じさせる。
もう一つ、リンドナーに関して評価が高いのがその話術、演説の上手さである。リンドナーのこの演説の上手さはドイツの政治家の中でも屈指と言われており、その理路整然した内容に加え、心に訴えかけるリズミカルで力強い口調、パフォーマンス、ユーモアを交えて聴衆を惹きつける事に長けている。
有名なのが2015年のデュッセルドルフの州議会で演説中、SPDの議員から過去の起業の失敗を野次られたところ、それを逆手にとってドイツの失敗を恐れる文化を痛烈に批判し、この激しい口調の演説は多くの人々の共感を得た。これは単なる程度の低い逆ギレではなく、理論と感情、力強さにちょっとしたユーモアと余裕が感じられる見事な切り返しだったと言える。
そしてリンドナーは今年の総選挙の結果を受けて発足される見通しである新たな連立政権において大臣などの要職に任命される可能性が高い。アンケートによると新たな財務相としてリンドナーを期待する国民が多いようだ。そうなれば彼をテレビで見る事も今後さらに増えるだろう。