個のフランスと組織のドイツ、W杯で優勝に近いのはどちらか

火曜日にドイツ対フランスの親善試合を観戦したので、遅ればせながら感想を書いておこうと思う。リーグ戦の真っ只中の親善試合とはいえ、ロシアW杯まであと半年近くと迫っている。両チームとも本大会では優勝候補と目されておりその戦いぶりが注目された。ドイツはここ最近では最も本番を想定したスタメン及びシステムでこの試合に臨み、フランスの方はよく把握していないが、こちらも多くのスター選手がスタメンに名を連ねた。

試合は結果から言えば2-2の引き分けで、この大事な時期に怪我を避けるためにも球際の激しさこそ無かったが、非常にレベルの高い良い試合だった。特に前日にイタリア対スウェーデンのアイデアに乏しい試合に比べると、親善試合ということを差し引いてもそのレベルの違いは雲泥の差だったように思う。内容は大雑把に言えば、強力な個人能力をベースにしたフランスに、完成度の高い組織力で戦うドイツだったという印象だ。

前半はフランスが快速3トップのスピードと技術を活かしてチャンスを多く掴み、34分に大きな展開から見事な個人技でドイツの守備陣を翻弄して先制した。ドイツはボールこそよく回るものの、やや消極的で動きに鋭さがない。

後半になってドイツの動きがやや鋭くなり試合を支配し始める。そして56分にカウンターからエジルのスルーパスをヴェルナーが決めて同点に追いついた。その後もクロースがフリーキックでバーを叩くなどドイツペースで進んだが、フランスはドイツの守備陣形が一瞬崩れたところに決定的なスルーパスを通し再び勝ち越す。

その後はドイツは反撃の糸口を掴めずこのまま試合終了と思いきや、ロスタイムにエジルの縦パスをPA内で受けたゲッツェがゴール前に飛び込んだシュティンドルに絶妙なショートパスを繰り出し、これを決めて同点に追いつき引き分けた。

まずフランスの述べておくと、その高い個人能力はおそらくロシアW杯の出場国中でもトップクラスであり、恐るべきポテンシャルを秘めたチームという印象を受けた。ここに火曜の試合で出場していないポグバ、グリーズマン、ジルーなどの経験豊富な選手が加わるとなると優勝候補との評価は揺るぎないものであろう。

一方で、それを差し引いても若い選手が多く名を連ねるチームはややムラがある事も予想される。また伝統的にフランスはイタリアやドイツのような相手に合わせた戦術の引き出しは多くない。これが常に個人能力の高い選手を擁しながら今ひとつ国際大会で安定した成績を残せていない要因ではないか。また、W杯という長丁場の大会を勝ち抜くためにはチームのまとまりも不可欠であり、この辺りが優勝するためのカギになるのではないか。

一方のドイツは突出したスターは居ないものの各ポジションに各々特徴を持った優秀かつ経験豊富な選手を揃えており、その層も厚い。そして、10年間チームを率いているレーヴが構築したその組織の完成度は代表チームの中では図抜けていると思われる。

火曜の試合に関して唯一の誤算は、キミッヒのバックアップとして右サイドをテストされたエムレ・チャンが全くフィットしなかった事であろう。しかし、その他のポジションは概ね2人以上の候補者を抱えている。懸念されていたFWのポジションもヴェルナー、シュティンドル、ワーグナーというタイプの異なる選手が台頭してきた。

中でもヴェルナーは昨年から成長著しく、その快速から裏を狙うスタイルはエジルとの相性が良い。順当にいけば彼がスタメンに入るだろう。更にゲッツェも火曜日は代表に復帰し、ロスタイムの絶妙なアシストで存在感を示した。ドイツは今回ほどメンバー選考に悩むW杯はない。

元々の安定感に加え、過去にないほどの充実した総合力はフランスなどの他の優勝候補よりも僅かに抜けているのではないか。ベスト4はノルマであり、それ以降の一発勝負に運も味方につけて勝ちきれるかが、既にテーマとなりつつあるだろう。