賃貸住居価格の高騰で、金持ちしか住めない街になりつつあるミュンヘン

ドイツの都市部の不動産価格の高騰は数年前から問題視されており、とりわけここ数年で賃貸住居の価格は急激に上昇している。そしてその中でもミュンヘンの状況は極めて深刻だと言える。

私自身も90-110㎡への住居へ引っ越しを検討し始めているが、あまりの賃貸価格の高さに開いた口が塞がらない。正確な平均値は知らないが、市内となるとざっと見る限りその賃貸価格は1㎡あたり18ユーロ程度、つまり仮に100㎡の家を借りれば月に1800ユーロはする。これに暖房やごみ収集、駐車場などの諸費用を含めれば余裕の2000ユーロ越えだ。日本円にして26万円以上となる。

いったい普通の給料で誰がこんな馬鹿みたいな家賃を払えるのだろうか。しかもこれは私が見る限りおよそ平均であって、決して特別な高級住宅などでは無い。また、ドイツで給料を貰えばわかるが、その手取りの少なさに最初は愕然とする。平均的な給与ならば手取りは独身者ならその6割くらい、既婚者でも7割くらいだ。社会保障が日本に比べれば手厚いとは言え、中間層の手取りの半分以上が家賃で吹っ飛んでしまう状況は異常と言う他ない。

もちろん、探せば比較的手頃な住居もある事はある。しかし、そんな住居はあっという間に応募者が殺到して、入居できるチャンスは極めて低い。ましてや、我々のような外国人は殆ど不可能だ。ついこの間、レーゲンスブルグで堂々と入居者をドイツ系に限定した賃貸広告がネットに掲載されて問題視された。

しかし、公にしたから大問題になるだけで、住居探しで外国人が避けられるのは暗黙の了解だろう。貸す方だって問題を作りたく無いから、経済力だけでなく言葉や生活文化が理解できる入居者を選ぶのは当然だ。私も何度か引越しをしたが、自力での住居探しは困難を極める。しかし、外国人でなくとも庶民であればこんな状況に怒りを覚えているのは間違いない。

そんな状況なので行政には何とか対策を打ってほしいものだが、残念ながらミュンヘン市内の不動産価格は益々上昇するとみられている。もう長いこと続いている低金利状態と記録的な景気の良さで、不動産の購入は相変わらず大人気だそうだ。

ドイツに関して言えば、今後も更に景気がよくなると予想されており、近々の金利上昇を望む声が大きくなってきているが、それでも欧州中央銀行は来年のうちにユーロ圏の金利を上昇させる事はないと言われている。ともかく現在ミュンヘン市内はかつてない程の勢いで新しい住居が造られているので、少なくとも数年後にそれらの多くが完成し不動産ブームも終わった頃で無ければ、ミュンヘン市内に庶民が住める状態にはならないだろう。