光ケーブルを推進しないブロードバンド後進国のドイツ

来た当時から感じていた事だが、ドイツはインターネットの速度が遅い。これは今まで住んだどの居住地にも当てはまり、我が自宅も未だにダウンロードでたったの8Mbit/sしか速度が出ない。日本などは既に多くの地域に光ケーブルが設置されており、安定した高速のインターネットが実現されている一方で、ドイツは未だに不安定なDSL回線を利用している地域が多い。

この状況は当然問題視されており、ドイツは国策としてインターネットの高速化を普及させる方針でいる。その為には他のブロードバンド先進国同様光ケーブルによる回線の普及が不可欠というのが専門家の一致した見方である。

しかし、光ケーブルに関して言えばその普及は遅々として進んでいない。何故なら通信業界の最大手であるドイツテレコム(以下テレコム)が光ケーブルではなく、従来の銅線を利用したVDSL2の進化版を普及させようとしているからだ。

この技術はドイツでVDSL2-Vectoringと呼ばれている。しかし、一般的には光ケーブルのまでの繋ぎの技術に過ぎないと言われている上、このVDSL2-Vectoringは回線を1つの事業者が管理して初めて実現可能な技術である。そして、この場合その事業者は例よってテレコムと言う訳だ。つまりテレコムはこのVDSL-Vectoringの技術をほぼ独占的に管理できる権利を取り付けている。

その結果、この通信業界でもテレコムの独占状態が徐々に形成されつつある。多くのプロバイダが高速のプランを提供するには、テレコムのVDSL回線を借りざるを得なくなるからだ。

現在利用しているベルリンのプロバイダEasybellもこれまでテレフォニカ社の回線を利用していたが、それが撤去される為、今後これまでと同様の料金プランを提供できなくなる旨の通知をして来た。更に、それに同意できない場合ドイツテレコムへの乗り換えを勧めて来た。要するに、Easybellも今後テレコムの回線を利用するという事だ。テレフォニカはO2のブランドで有名なプロバイダでドイツでも自社回線を持つ大手事業者だが、テレコムの軍門に下ったと言うことだろう。

そう言う訳で、現在私は新たなプロバイダを探しているが、数年前に比べて明らかに選択肢は狭まっている。私の地域でテレコムに対抗出来そうなのはボーダフォンかM-Netぐらいしかない。両者とも自社回線を持ち、ドイツテレコムに対抗して光ケーブルを推進している。

特にM-Netは早くからミュンヘンを中心に光ケーブルに特化したサービスを提供しているので、将来的にはかなり興味はある。しかし、光ケーブルは私の地域にはまだ届いていない。ボーダフォンのVDSLは若干テレコムより安いが、プランを1ランク落とす必要がある上に、利用したことのない回線なので2年契約と言うのもリスクがある。結局、ひとまず高額のテレコムのネット回線を利用せざるを得ない状況だ。

個人的には、将来的に確実な技術である光ケーブルでの通信を普及させてほしいものだが、それよりもまず従来ある銅線を使ったVDSL-Vectoringの方が事業者にとって安上がりと言う事だろう。よく言えば堅実な方針かもしれないが、これだけ景気が良くて儲かってる割には本当にチマチマしてケチな方針で、私の中では悪い意味で典型的なドイツだ。

その上、VDSL-Vectoringはそもそもテレコムの独占状態下で成り立つ技術だから、仮にそれが光ケーブルより低コストで実現してもどうせその価格が我々ユーザーに反映される事は無いだろう。結局テレコムに光ケーブル同様の金を巻き上げられるのは目に見えていると言う訳だ。