ドイツで子育てをする事になり、恵まれていると思っていること

最近日本では子育て為に海外に移住する人が増えているという記事を読んだ。私は現在ドイツで子育てをしているが、個人的には全く海外で子育てをしたいとも思っていなかったし、子供が日本、つまり母国語で腰を据えて「読み書きそろばん」を学習できるという、いわば当たり前の環境が羨ましいと思うことが多々ある。私自身は日本人に海外への教育移住を勧めたいとは思わない。

とはいえ、確かにドイツで子育てをしていて恵まれていると思う点も幾つかあるので、この機会に紹介しておくことにする。私は日本での子育てを経験していないので偉そうには言えないが、参考にはなるかもしれない。あくまで男性目線の独断と偏見によるものである。

まず、私が一番に挙げたいのは子供の遊ぶ公園の質が素晴らしいということだ。これは日本で言う公園というよりはアスレチックランドで、そのような質の高く工夫された遊具ある公園が多い。私の家の周りにも沢山ある。当然それらは無料であり、それらはドイツらしくキッチリと手入れしてある。

例えばミュンヘン空港の側にはBesucherparkという公園設備がある。ここは最近新しく整備された非常に充実した公園設備で、子供連れでミュンヘンに来たら寄ってみたら良いと思う。ここは風が吹き抜けて寒いのが玉に瑕であるが、一部のコイン式の遊具を除けば無料で様々な遊具で遊べ、飛行機の大型模型もあるので子供たちはきっと喜ぶだろう。

そして子供たちがしっかりと頭と身体を使って思う存分遊べる環境があることは、日本人とドイツ人の運動能力の差、ひいては生活力の差の元になっているとも思える。ただし、これは私の住んでいるミュンヘン近郊が恵まれすぎている事と、私が一時帰国のたびに立ち寄る日本の地方が酷すぎるという点を差し引いて考える必要はあるかもしれない。

もう一つは、子供の権利はしっかりと法律で守られており、それには歴としたとした力がある事だ。もちろん子供関連のトラブル自体はこちらでもあるし、私も経験した。私の場合、赤ちゃんの夜泣きがうるさいと隣のオバサンが何度もネチネチと文句を言ってきたことがある。これは正直私にもかなりのストレスになった。

しかし、ここで私が子供をぶち回したり、放ったらかしにしていない限り、赤ん坊が泣き叫ぶことは法律で守られている。私も彼女には大変気の毒だと思ったが、ここで法律を無視した譲歩する必要はない。そんな例外を作ったらこのテーマが同じ建物の他の子連れ家庭にも波及し、問題が余計に大きくなる。結局彼女はある時から全く文句を言わなくなった。諦めたのか、文句を言えないことを知ったのかは定かではないが、何れにせよ解決した。そのうち幸いな事に夜泣きも収まった。

詰まるところ、こういった事態にもはっきりとルールが定められている以上それに即して対応すれば、多くの場合それで問題は解決、終結させることができる。それ以前に、子供にまつわるアレコレが問題になったり議論になったりする事自体が少ない。法律やルールが強力で他人への配慮の少ない世の中は冷たいと思うこともあるが、こと子育てに関して言えば楽だと個人的には感じている。

あと経済的な面として、子供への手当はおそらくドイツの方が日本よりは手厚い。Kindergeldと呼ばれる児童手当は2人目までは子供1人に対し月194ユーロが18歳まで支払われる。3人目は200ユーロ、4人目以降は225ユーロである。

さらにElterngeldと呼ばれる手当は子供が生まれてから1年間最低月300ユーロ受け取ることが可能である。さらに15〜36ヶ月までの子供を保育所などに送らず自宅で面倒を見る場合、バイエルンに限りBetreuungsgeldという手当もあり、月150ユーロを受け取れる。これらの手当を受ける条件を満たし、申請するのはそれ程難しくはない。確かにドイツでは税金を沢山払ってはいるが、家族にこういった手厚い支援をするのは有難い。

最後に、おそらく多くの人が海外へ教育移住する最も大きな動機であろう英語教育については、言語的にも文化的にも親戚の関係にあたるドイツは明らかに日本より良い環境であろう。私は幼少期から子供を外国語漬けにすることを別に良いことだとは思っていないが、それは考え方人それぞれだろう。