ドイツではモンスタークレーマーに、どのように対応しているのか

日本で仕事をしていた頃、お客さんに罵声を浴びせられた事がある。その内容まではさすがに覚えていないが、余りに酷い言い草だったので少しムッとなった所、ベテランの社員の人にたしなめられた。そこで何があってもお客様にはまず謝りなさいと教わったことがある。今ではどうか知らないが、大かれ少なかれ、それが日本的なトラブルの解決法だろう。

そして、こちらドイツでも残念ながらそのようなモンスタークレーマーみたいな人間は存在する。例えば、大手通信会社のボーダフォンはネットが上手く繋がらないという理由でTwitterで”Dumme Hurensöhne”という罵りの言葉を浴びせられた。これは日本語に直訳すると「馬鹿な娼婦の息子」である。”Hurensohn”は国際的にも最低レベルの下劣な言葉と認知されており、冗談でも絶対に使ってはならない。その教育レベルを疑われる。

Vodafoneの社員はこれに対し”Bei so einer Ausdrucksweise kann ich versehen, dass das Internet sich freiwillig von Dir verabschiedet” = 「そのような言葉使いならインターネットの方が貴方から別れて行くのも理解できますね」と答え、この客との契約解除を示唆した。そして、この回答を多くのネットユーザーが称賛し、この下品なクレーマーに対して契約解除と無期限のインターネットの使用停止をボーダフォンに要請した。

実際に、ボーダフォンはこのような著しく下劣な侮辱や脅しなどが理由で顧客との契約を解除する事もあるとの事だ。この場合、それぞれのケースを個別に十分に検討したうえで決定する。これはもちろん、自社の社員を守ると同時に、このような脅しに屈しないと言うメッセージを与えるのが目的である。場合によっては損害賠償を請求することもあるそうだ。

もう一つ似たような話がある。ドイツの大手食品製造会社ドクター・エトカーは、昨年チョコレートピザという奇抜な商品を発売した。この製品に対してある消費者が”schmeckt nach Hurensohn”=「娼婦の息子の味がする」というこちらも著しく下品なクレームをつけてきた。

これに対し、ドクター・エトカーは”Gierig gewesen und in den Finger gebissen?”= 「欲しすぎて自分の指を噛んだんじゃないんですか?」と切り返した。ちょっと私はこの訳が正しいのか微妙だし、このユーモアを完全に理解するほどドイツ語の感性を持っていないが、この回答は様々なメディアで絶賛され拍手喝采を浴びた。Twitterでは1000回シェアされ、26000のリンクを得たそうだ。

しかし、このチョコレートピザは正直なところ、あまり食べたいと思うような外見ではないのは確かだ。私が甘いものを好きでないのもあるが、一般的に評判の良い商品なのか甚だ疑問である。

クレーム対応について話を戻せば、さすがにこれ程気の利いたユーモアを交えてクレーマーに回答するのは稀であると思うが、当然ながら日本のように謝罪をして丸く収めるという考えはまず無い。また、礼儀正しいことは非常に重要であるが、格式ばった対応をするよりもリラックスして落ち着いた態度の方が好まれる。

しかし、だからと言って、相手のクレームがいくら不当でも逆に怒ったりするのは当然NGである。客は日本ほど神様ではないが、売る側と客、敢えてどちらの力が上かというならば、現在ではドイツでも客の方が上であるというのが共通認識だと思っている。