コメルツ銀行、1万件の巨大リストラを発表する

ドイツ第二の規模を誇るコメルツ銀行が先週なんと1万件と言う巨大なリストラを行う事を発表した。これで全体で1000あった店舗も450にまで減少する。ドイツ国内ではこのリストラに3人に1人が該当し、支店の数もおよそ半分になる。

コメルツ銀行は中小法人客に強い銀行であり、2009大手のドレスナー銀行を吸収して巨大化しドイツNr.2の銀行となった。しかし、その僅か2週間後にリーマンショックが起こるという不運に見舞われ、政府から救済される事態となり、現在でも15,6%はドイツ政府の所有となっている。

故に今回のリストラに関してはドイツ政府もコメントしており、財務相のショルツもやむを得ないとの認識を示した。銀行といえば安定した職業の代名詞だったが、もはやそんな常識は通用しない時代になった。

もっともこのようなリストラは多かれ少なかれ時間の問題だった。要因は現在進行中の社会経済の急速なデジタル化である。特にドイツの場合は全国に小規模な銀行が数多く散らばっており、これも今後合併されなどして淘汰されていくことになる。2018年の時点でドイツには約1900の銀行が存在し、2030年には150から300の銀行しか残らないと既に予測されている。

特にコメルツ銀行はDAXから締め出されるなど業績が悪かったので、ドイツ最大手であるドイツ銀行との合併の噂があった。これは結局破談となり、外国のメガバンクに買収すると見られていたが、結局子会社であるネット銀行、コムディレクト銀行を買い取った。支店、人員を削減して今後はオンラインでのサービスを強化する方針であるのは明らかだった。

更にそのようなデジタル化に波が急速に押し寄せ、ただでさえ銀行に厳しい時代が到来していた折にやって来たのが、今回のコロナ禍である。最も恐れられているのが、コロナ禍の後に銀行の倒産連鎖が来ることである。現在のところ、ドイツ政府は国民や各企業に対し援助をしている為、企業の破産申請は基本的に停止されており、銀行への影響はさほど表沙汰にはなっていない。

しかし、コロナ禍が過ぎ去り政府の援助も無くなれば、現在その援助だけで生き長らえているゾンビ企業の倒産の嵐が来る事は間違いない。特に危ないとされているのが、コメルツ銀行が強いとされる中小企業になる。そういう訳で、おそらくこれは先を見越した大規模リストラでもある。

また、このコロナ禍で甚大な被害を被る可能性が高いと言われているのが、地域密着型のビジネスモデルで同じく中小企業を顧客としているSparkasseである。

Sparkasseはかつてどんな小さな市町村でも見かけたものだが、現在では先に挙げたデジタル化の影響で多くの支店が閉鎖に追い込まれている。確かにオンラインバンキングなどのサービスもあるが、そのサービスの質はオリジナルのネットバンクに遠く及ばない。私も昔は口座を持っていたが、いきなり振替口座を維持するだけで毎月6,95ユーロを払うことになったので解約した。

Sparkasseは基本的に所在する各市町村の所有であり言ってみれば公の機関になる為、倒産し消滅する事はまず無いと言われる。故に安全である事は確かだが、おそらく今後合併などが加速し、更に多くの支店が消滅することになる。それに伴い、残念ながら多くの職が失われていく事になるだろう。