私の身の回りにおけるここ数年でもっとも喜ばしくない変化の一つに渋滞の増加が挙げられる。これは私にとっては年々爆発的に上がる不動産の高騰に次ぐ不快な現象と言ってよい。しかし、この渋滞の増加も不動産の高騰と同様、ここ数年の景気の良さと相関関係にあるだろう。どうみても車は増えたし、しかも大きくて新しい車が増えた。
ミュンヘンは全体的に景気の良いドイツでも最も経済的に豊かと言われるだけでなく、美しい自然に歴史的な建築物、旅行者を惹きつける観光地など、人々が欲するものをバランスよく高いレベルで備えている。私はそういう所に住み、社会に適応して問題なく住んでいることを有り難く思うが、さすがに最近の渋滞の酷さに車の中で一人でブチ切れることが多い。
景気が良い以外に考えられる渋滞の原因としてまず挙げられるのが、工事現場の多さだろう。しかし、これも止むを得ない部分がある。ドイツのアウトバーンは無料だから、隣国からの車もこぞって利用することは想像に難くない。その結果道路が傷むのも早いし、舗装が必要となる。
不満があるとすれば、その工事期間の長さだ。一部の工事現場は見るからに進展しないどころか、少なくとも感覚的にはもう何年も続いているようなところもたまにある。原因は知らないが、困ったもんだ。
もう一つ、これはより深刻だと思うが、アウトバーンでの事故の多さだろう。知っての通りドイツのアウトバーンは多くの区間で速度無制限だ。私は混んで無ければ大抵クルーズ機能を150km/hにセットして走る。この速度は3車線あれば真ん中の道を大抵走るくらいだが、一番右端は80km/hのトラックが走り、一番左は推定200km/hを超える超速の車がヒューンと走っていく。
これだけ速度差のある車が同じ道路を走っていればそれは事故が起こる確率は高くなるだろう。しかもトラックの運転手は携帯を操作していたり、スピード狂の車は容赦無く煽ってきたりする。特にBMWは最悪だ。車の顔も偉そうだが、あくまで私の独断と偏見で言えばその運転マナーも悪い。
個人的には安全のためにも、他のヨーロッパ諸国と同様アウトバーンの全ての区間で速度制限をつける事に賛成だ。しかし、ドイツ経済の基幹を成す車産業界が黙っていないだろうから期待薄である。以前、将来的にアウトバーンの利用に料金を徴収するという話があったが、その話はどうなったのだろうか。そうなれば若干は車の量が減るのだろうか。
道路を増やしたり広くしたりするのが一番簡単な解決策なんだろうが、これはよく考えて実施して欲しい。道路を闇雲に増やす事で歩行者が虐げられるし、人間味のないつまらない街や景観になってしまう。
電車や飛行機をもっと利用したいと言いたいところだが、ドイツ鉄道は遅延は日常茶飯事の上にサービスも最悪なので全く期待できない。飛行機も格安航空会社があると言ってもそれでも随分高い。結局私は今後も車が主たる移動手段になるだろうから渋滞の増加を受け入れる以外にないだろう。