ベルリンでついに住居建築に乗り出したアルディ

基本的にアルディはその圧倒的に安い食料品と生活必需品の販売で有名であるが、その傍らパソコンやスマホ、飛行機のチケットの販売、携帯電話通信事業を行っている。更には音楽ストリーミングサービス、電子書籍、ゲームの販売などのデジタル事業にもぬかりがなく、実に手広く商売を行っている。そのアルディはついにこの程、ベルリンで住居建築にまで乗り出した。

アルディは2年前辺りから昨今の消費者の志向の変化に伴った大幅な店舗改装に踏み切っており、既存の店舗をより広く、高級感のある新しいものに改築している。その店舗改築の際、1階をアルディの店舗にし、上の階に普通の住居を建築して賃貸するという具合だ。アルディは将来的にベルリンの市内30ヵ所にこのような店舗と住居一体型の建物を建築する予定でおり、それで約2000の新しい住居が出来るとされる。既にベルリンの2ヵ所で建築は始まっているとの事で、これらの住居は例によって低価格で賃貸される予定になっている。

具体的にはこの住居の3割が月の賃貸価格6,50ユーロ/㎡という福祉用の住宅として利用され、残りの7割の住居も10ユーロ以下/㎡で貸出されるとの事だ。これが本当ならミュンヘンに住んでいる人間からすれば夢のような価格だろう。普通ならこの倍くらいは払わされる。ベルリンはミュンヘン程異常な価格ではないが、一般的に大都市の不動産価格の高騰はドイツ全土での問題になっていおり、ベルリンもここ数年で例によってかなり上昇している。さすがアルディと言わんばかりの激安価格である。

しかしながら、当然アルディがこのようなビジネスを始めるのは理由がある。どんなに安かろうが、あくまで合理的に、確実に儲かる事をするのがドイツ人だ。私の中ではアルディはその権化と言ってよい存在である。

その理由として、まずはベルリンの驚異的なペースでの人口増加を挙げる必要がある。長らくベルリンは首都としては相当影の薄い存在だったが、現在では2030年までに30万人の人口増加が見込まれている。当然、アルディはこの物凄いスピードで成長するマーケットに対応すべく、多くの新しく、しかも大規模な店舗を建築、或いは既存の店舗を大きく改装してその需要を満たす必要がある。アルディのような庶民派のスーパーの場合、その売り上げは人口増加の恩恵をもろに受けるだろう。

しかし、この新たな店舗を建築するのが簡単ではないらしい。というのも昨今の情勢では新たにスーパーを建築、改築したくとも簡単に役所から許可が下りないからだ。これだけのペースで人口が増加しているのならば、まずはスーパーよりも住居を優先する必要があるという訳である。そもそも、大きな建物を建築できる場所はどんどん限られていく。そこでアルディが考えたのが、既存のスーパーを改築する際に上の階を住居にしようという案である。

これなら、寧ろ役所は積極的に許可を下すだろう。アルディが需要に対応したより大きなスーパーを新たに作ると同時に、不足している住居も建築できる。その建物に住んでいる人は地上階のアルディを買い物に利用するので車を使う必要がなくなり、駐車場のようなおよそ非効率な土地の使い方をする必要が軽減され、環境、安全面からも言っても良い。これでアルディとベルリン市、両者にメリットがある関係が出来る。

しかも昨今の不動産価格の高騰で他の業者が住居建設する際には、まず土地に対して糞高い金を払わなければならない一方で、アルディは既存の店舗の土地を既に自己所有しているので、この点のコストにおいても既に他の業者よりも優位に立っている。おそらくこの理由により、庶民がこのご時世では考えられない安い賃貸価格でこの住居を借りるというプランを公にすることができる。

また、スーパーと住居を一体化した建物を建築するというのは、実は目新しいアイデアではなく、アルディは既にハンブルクでこれをテストしており、競合のリードルも既に小規模ながらバイエルンで行っている。しかし、わざわざこの時期にこんな話題を大々的に振りまいたのは、昨今の住宅事情を顧みたPRの意味もあるだろう。高騰する賃貸住居に庶民はもはや諦めムードで、行政もこれといった有効な手を打つことが出来ていない。そんな中、アルディがこのような低価格住宅を建築するというのは否が応でも注目に値する。

アルディがこれだけ手広く、更に低価格路線のビジネスで長期的に渡り成長を遂げているのは、単に庶民の味方であったり、競合他社を価格で出し抜くというな消耗戦略ではなく、どの分野でもしっかりと利益を上げることのできる合理的なシステムを構築しているからだろう。今回の住居ビジネスに関してどのように転ぶかはまだ未知数だが、その話を聞く限りでは例によって異常に効率が良く、合理的な印象を受ける。

しかし、アルディの特徴は手広く商売をしつつも、あくまでも本業の生鮮食料、日用品の販売を軸にするという点で一貫している。それ以外の分野は同様に低価格路線で自分たちの客層を獲得しつつも決して深入りはしない。この住居ビジネスに関しては理論上、人口増加の大きな他の大都市でも行う可能性があるが、おそらくそれも程々であくまで堅実に様子を見ながら進めていくだろう。