ドイツの人口は長らく8200万人と言われていたが、調査によると昨年22万7000人増加し、史上初めて8300万人を突破した。ドイツも他のほとんどの先進国の例にもれず少子高齢化社会になりつつあり、死亡者数が出生者数を大幅に上回っている。本来なら人口は減少するところだ。しかし、ここに来て過去最高の人口を記録したのは、言うまでもなく外国人が増加したからである。
このようなニュースが出ると、当然のことながら反対意見が出てくるものだが、実際には国力を維持するためにも人口の維持は非常に重要だと言われており、とりわけ高齢化で生産年齢人口の減少は経済力や社会保障制度の維持に大きな影響を及ぼす。
そしてドイツにも日本で言う「団塊の世代」のような戦後のベビーブームが存在し、それは概ね日本よりやや遅れており、1960年台前半になる。近い将来ここで生まれた世代がリタイアし年金受給生活に入ることになる。これらの増加する高齢者の社会保障サービスを我々が支えなければならない。
この為、既にドイツは外国から専門性を持った労働力を確保する方針に既に舵を切っており、全ての人口のうち外国人が占める割合は12,2%にまで増加した。また、ドイツの全人口のおよそ4分の1は既に移民背景を持っており、ミュンヘンのような大都市だとその割合は更に多くなる。それは今後更に増加するだろう。
もともとヨーロッパ内での移民などは全く特別な事ではないが、少なくとも都市部に関して言えば、もはやヨーロッパ以外からの移民と共に生活する事は当たり前の事になりつつある。
もっとも、この人口増加は地域によってかなりの格差がある。最近、旧東ドイツの人口が1905年の水準まで落ち込んでいるという記事を書いたが、実際に人口が増加しているのはベルリンを除けば殆ど旧西ドイツの州である。最も人口増加が著しいのがそのベルリンで、昨年でおよそ31000人増加した。人口増加は大都市部に集中的に起きている。
これらは当然大都市部の住居不足や、増加する渋滞、すし詰めの公共交通機関などの問題を引き起こしており、我々庶民にとって喜ばしい事ではない。インフラだけでなく、治安、医療、教育などに必要な労働力も必要になるのだが、これらが果たして追いついているのかも甚だ疑問である。一方で旧東ドイツの地域は不満が燻り、変なポピュリストの連中が幅を利かせている。
また、当然のことながら外国人が増えるとなると、それを社会に適応させなければならない。これを過去に怠ってきたツケが現在、反社会的な外国人や変な国粋主義を一部で蔓延させている原因の一つでもあるだろう。
ドイツは外国からの専門労働力を積極的に受け入れる一方で、反社会的な外国人の取り締まりを明らかに厳しくしており、今後はテロなどの重大犯罪だけでなく、税金逃れや麻薬関連の不法行為でも母国へ強制送還される可能性がある。
このご時世で人口が増加しているのは結構な事だろうが、この地域格差や外国人の適応政策は今後ますます大きく、かつ恒常的な政治テーマになるだろう。
今後の人口動態に関して言えば、多くの外国人の受け入れて行きつつもこの増加トレンドは遅くとも2040年頃には終わりとなり、長期的に見れば、やはりドイツの人口は減少していく傾向にある。また、生産年齢人口は今後大幅に減る見込みで、これは外国人労働力を受け入れても現実的には埋め合わせできないとされている。
これらは社会や労働のデジタル化や新たな技術などで埋め合わせされていく方針だと推察される。ここ数年でドイツの社会は実際に大きく変化した感があるが、我々は大きな時代の変革期に生きている事を実感させられる。