ロシアからのガス輸入ストップの場合、甚大な被害が予告されている

ロシアのウクライナ侵攻による生活の甚大な影響を考慮せざるを得ない状況になってきた。ドイツはこれまで主な経済制裁としてロシアからのガスパイプライン「ノルトストリーム2」の停止、西側諸国と連携し国際送金システムSWIFTからのロシアの締め出し措置を実施している。

もっとも、ノルトストリーム2はそもそも未稼働だったパイプラインである。SWIFTの締め出しも、ドイツがエネルギー輸入で利用するズベルバンクとガスプロムバンクは適用外としている。つまり、ドイツは経済制裁を実施しながらも、これまで通りロシアからエネルギーの調達を可能にしている。

当然、この期に及んでロシアと取引を継続している事は問題視されており、直ぐにでもロシアからのエネルギー輸入をストップするべきか、意見は割れている。確かにモラルから言えば、今直ぐにでもストップしたいところだ。ドイツ人の過半数もこれに賛成している。

しかし、経済環境相のハベックが言うには、仮にロシアからのエネルギーを完全にストップした場合、一応今年の夏までは大丈夫との事だが、来年の冬のEUエネルギー供給はヤバいとの事だ。それは単に個人レベルで生活の快適度が落ちると言うレベルではなく、社会経済における極めて重大な損害が引き起こされる事を予告している。

このうち、オイルと石炭に関しては何とかなりそうと言う話だが、ガスに関してはドイツは55%ロシア産に依存しており、これを埋め合わせるのは簡単ではない。ノルウェーからの輸入を増やすと言ってもその量はたかが知れている。アルジェリアから引っ張って来ると言う話もあるが、それも先行き不透明である。

そもそもドイツはガスに関してはパイプラインでの調達に特化したシステムを構築しているらしく、船で液化天然ガスを輸入する為のターミナルが存在しない。要するに、本当にロシアからのガスを当てにして来た訳だ。

そう言う訳で、私を含めた多くの人にとって歯がゆい現実であるが、ドイツが現時点でロシアからのガスをいきなりストップするのは難しい。仮にドイツの冬で暖房が動かなくなれば、それこそ命に関わる。そして仮にそこまでした場合でも、ロシアが本当に戦争を止めるのか、誰も分からない。寧ろ逆に追い込まれて自暴自棄になる可能性もある。

ただ間違いない事は、ドイツは今後ロシアからのエネルギー依存体質の脱却を早急に進め、我々庶民のガス代、その他のエネルギー代は更に爆上がりするだろう。こればかりは止むを得ず、腹を括るしかない。ピンチはチャンスと言わんばかりに、自然エネルギーを推進していきたいところだが、一時的に原発や石炭に回帰する事も十分考えられる。コロナパンデミックを上回る不景気が今後やって来る可能性は十分にあるだろう。