FCバイエルン、ワクチン未接種選手の減給措置に踏み切るか

ドイツのコロナの新規感染者数はもはや7日間平均で5万人近くに達しており、状況が緊急に切迫してきた。特に状況が酷いのは例によってザクセン州である。この地域はマスクやワクチンをやたら敵対視する右翼勢力がやたら強いので不思議ではない。とは言え、私の住むバイエルン州もかなり状況は酷い。

そう言う訳で、バイエルン州首相のマルクス・ゼーダーは例によって厳しい措置を打ち出す事を明らかにした。

ここで既に予告されているのが、ワクチン未接種者に対する「事実上のロックダウン」である。「事実上」との言葉通り、これは直接人との接触を禁止するものではないが、何らかの著しい不利益を与える事で、自主的に隔離せざるを得ない状況を作り出す事だ。それが嫌ならワクチンを打てと言う事だ。つまり、ワクチン未接種者に対する圧力は日に日に強まりつつある。

そして、ここで最も象徴的なのが、FCバイエルンのスター選手、ヨシュア・キミッヒである。キミッヒは自らが未接種者である事を公表しており、有名人として現在世間から強烈なバッシングを受けている真っ最中だ。

本来ならば所属するFCバイエルンはこの批判からキミッヒを守りプレーに集中させたいところだが、そう言う訳にはいかない。そもそも未接種者なので、本人が感染していなくとも感染者と接触していた場合、それだけで練習や試合に参加できなくなる。事実キミッヒはこの2週間で2度も感染者との濃厚接触が確認されて強制隔離の措置が取られ、昨日は試合を欠場した。

そしてキミッヒを欠いたFCバイエルンは昨日15位に沈むアウグスブルクに敗れると言う波乱を許した。試合自体は私は観ていないが、キミッヒと言う超重要ピースを欠いたと言う事実に加え、このワクチン騒動がチームに悪影響を与えているのは間違いない。社長のルンメニゲもキミッヒが接種する事が望ましく、この騒動から解放されるべく解決を探している最中だとコメントしている。しかし解決はコロナが猛威を奮っている以上、最終的にキミッヒがワクチンを接種する以外無い。

そこで今日報じられたニュースが、FCバイエルンは遂にキミッヒをはじめとしたワクチン未接種の選手の給料を削減すると言う話である。具体的には他者との接触が禁止されている隔離期間分の給料を払わないと言う訳だ。これはタブロイド紙であるBILDの報であり、法的にそもそも可能なのか私は知らない。しかし、昨今の情勢を見ればこれは十分にあり得ると思わざるを得ない。

因みにキミッヒの給料は年棒2000万ユーロなので、一週間の隔離期間で38,4万ユーロ(約5000万円)の削減になる。これらは我々一般人からすれば余りにも途方もない金額なので、キミッヒがこれをどう思うのかは知らないが、見せしめとしては十分過ぎるだろう。

何より、これをFCバイエルンが可能にした場合、これは我々一般人にも波及する可能性は十分にある。サッカー選手のみならず、世の中には他者と接触する事によって成り立つ仕事は山ほどある。そのような人々が未接種で不運にも濃厚接触などで隔離状態になれば、キミッヒ同様給料を削減されるかもしれない。

確かにこれまではロックダウンなどで家に隔離され、仕事が出来ない状況になっても国は給料を払ってくれた。現在では、完璧ではなくともワクチンを接種すればかなり高い確率で重症化を防いでくれることは明らかになっており、この為に国は想像もつかないような莫大な投資をした事は周知の事実だ。もはや国の手厚い措置はもはや期待出来ない。

ゼーダーは既に来週の水曜日から規制を強化する事を明らかにしているが、未接種者に対する「事実上のロックダウン」とは具体的に何なのかは今の所不明だ。取り敢えずゼーダー以下のコメントしている。

man könne nicht immer noch Rücksicht nehmen auf die, die selbst keine Rücksicht auf andere nehmen

「自らが他者に対して配慮できない人に対し、いつまでも配慮する事はできない」

このコメントを聞けば、州があらゆる法的手段をとって未接種者に厳しい規制を課すのは明らかだろう。