ドイツ交通相アンドレアス・ショイアーは昨年のEU判決によるアウトバーン有料化失敗、更には国会で虚偽の答弁をしたとして痛烈な非難に晒され、先の木曜日に議員による調査委員会で尋問を受けた。まず、これまでの話を簡単におさらいする。
ドイツのアウトバーン有料化案は実現直前まで漕ぎ着けたが、最後のどころでEUが許可を下さなかった。しかし、ショイアーは既に料金システムを手がける会社と契約のサインを済ませており、道半ばでこの契約を破棄した。この会社は当然その損害賠償を国に対し請求し、その額は5億6千万ユーロにのぼる。
批判に晒されるショイアーは国会の答弁で契約をEUの判決後まで待つ事は不可能だったと述べており、この5億6千万の損害賠償の支払いを拒んでいる。しかし、この会社は事前の交渉でショイアーに対し、契約をEUの判決が下りるまで待つ事をオファーした事実があると議事録を持ち出してきた。
これが事実ならショイアーは5億6千万の血税をドブに捨てるばかりか、国会で虚偽の答弁をしたとして辞任は免れない。そう言う訳でショイアーが木曜日に行われる調査委員会の尋問でどのような証言をするのか、非常に注目されていた。この尋問は深夜まで及んだが、ZDFはこれを生で現場からリポートしている。
この日はこの取引に関わった会社、政府側の合計5名が尋問を受けたが、ショイアーの尋問はその最後であり、かなり夜遅くの時間帯となった。報道によるとショイアーは余裕の表情で、およそ15個の分厚いファイルを自ら台車にのせて持参し、この疑惑を余す所なく解明するとして登場した。この契約に関する書類はおよそ800,000枚あるとされる。
そしてその答弁であるが、やはり予想通りショイアーは自らの非を認める事はなかった。Spiegel Onlineによると、ショイアーは当時の交渉について細部まで記憶しており、一部に関してはかなり詳細に答えたものの、肝心のEU裁判所の判決後に契約を締結するオファーがあったかどうかに関しては「どういうわけか記憶にない」とはぐらかした。
では会社側が主張するようなオファーはそもそも存在しなかったかと言えば、それもショイアーは否定も肯定もせず、あくまで記憶に欠落がある事を述べた。ショイアーへの尋問は深夜3時にまで及ぶ長丁場となったが、時間を追うごとにショイアーはリラックスし、椅子に寄りかかってチョコレートをほうばるなどの余裕を見せたそうだ。
詰まるところ、ショイアーは犯したウソや不正を証明不可能にする定番の言い訳「記憶にない」という答弁を終始貫き通し、ひとまずこの窮地を切り抜けた。ファイル15冊、800,000枚もの関係書類がある割には、一番肝心な部分で証拠書類がないというのは極めて不自然だが、このような事は古今東西どこも同じだろう。日本でもサクラ、モリカケ疑惑などは「記録もなく、記憶もない」だ。
ショイアーに関しては、今後も野党側が徹底的に追求する姿勢を見せているが、これまでのところ所属する党内(CSU)のサポートも取り付けている様子であり、おそらくこのまま逃げ切るだろう。しかし、おそらく国民の大半はショイアーがウソを突いていると確信している。5億6千万もの血税をドブに捨てるリスクを犯してまで、何故ショイアーは2020年のアウトバーン有料化実現に拘ったのか、公には言えない話がある事は間違い無いだろう。