アウトバーン有料化失敗で窮地に立つ、ドイツ交通相アンドレアス・ショイアー

およそ一年ほど前の話になるが、ドイツのアウトバーンが有料化になりそうな事があった。まあ時代の流れから言ってもそれは既定路線だろう。環境問題が取り沙汰される現在、自動車の利用を高コストにし、代わりに鉄道の利用を安くして促進するのは理にかなっている。

しかし、このプロジェクトは実現目前でEUの裁判所より却下される事になった。何故なら、ドイツのシステムは事実上外国のドライバーからのみ料金を徴収するという狡いもので、これが外国人差別だと判断されたからだ。と言うわけで、引き続きアウトバーンの利用は今の所無料のままなのだが、話はこれで終わりではない。

まずいのはドイツの交通相としてこのプロジェクトを推し進めてきたアンドレアス・ショイアー(CSU)は、このプロジェクトがEUから許可を貰えるという前提で、料金徴収システムを運営する会社と既に2018年末に契約のサインを済ませていた事だ。当然これが却下されたことで契約は不履行、多額の金をドブに捨てる事になる。そして、その額はおよそ5億6千万ユーロと言われている。これは当然国の負担、つまり我々の血税から支払われる事になる。

これだけでも当然腹立たしい訳だが、更に今年はコロナ禍で経済はどん底、国の税収もガタ落ちである。生活が苦しくなる人々も増える中、このような馬鹿げた事に我々庶民の血税が利用されるなど、あってはならないだろう。

そもそも、ドイツのアウトバーン有料化プランは、オーストリアをはじめとした隣国から非難されており、元々曰く付きだった。そのような状況で、実現確定前に業者とサインをする必要があったのか、誰でも疑問を持って然るべきだ。事実、これは国会で野党から質問されている。

これに対してショイアーは、法律を施行するためにも年内(2018年中)に契約を締結すべきで、EUの判決を待ってサインをする事はテーマにはならなかったと答えた。何だか遠回しな答え方で今ひとつ意味がわからなかったが、要するに状況から言って、契約の締結をEU裁判所の判決後まで待つ事は不可能だったという意味に取れる。

しかし、ここに来てショイアーの発言を覆す新たな議事録が出現した。それによると、実はこの業者はショイアーに対し、EUの判決を待って契約を締結する事をオファーしたそうだが、ショイアーは2020年にはアウトバーンは有料化されなければならない事を理由にこれを断ったそうだ。これが事実だとすれば、確かに怪しい。何故それ程までにアウトバーンの有料化を急いだのであろうか。

そして来たる来週の木曜日、ショイアーはこれについての釈明を連邦議会の調査委員会による尋問で行う予定になっている。ショイアーは既に野党から嘘つき呼ばわりされ、当然辞任を要求されているわけだが、この調査委員会で仮に(更に)ウソをつけば、裁判同様、それは犯罪になる。個人的にショイアーがここでどのような説明をするか、かなり注目している。

因みに、このショイアーは4月末に自動車の交通違反の罰則ルールを大幅に厳しくして注目を浴びたが、これも法的に認められず、結局元のルールに戻すことになり非難を浴びた。どうも空回り隊長のイメージがある。

ただショイアーは割と爽やかな風貌に、今となっては問題だらけのドイツの交通事情に色々と改革を施そうという姿勢は窺えるので、世間の不評の割には個人的にはさほど評価は低くない。姑息なアウトバーンの有料化案も元々は陰湿でポピュリスト的な元CSU党首ゼーホーファーが持ち出したもので、ショイアー一人の責任ではない。もっとも、何故5億6千万ユーロの血税をドブに捨てる顛末になったのか。その理由次第では辞任も止むを得ないだろう。