財務相オラフ・ショルツ、富裕税の導入に言及する

今回のコロナ禍においてドイツは過去に例を見ない経済的援助を国民へ施した。この為賛否はありながらも経済崩壊は今のところ防いでいる。財務相のオラフ・ショルツが言うには、今日の時点で既に2009年のリーマンショックの直後よりも国の借金は少なくなるそうだ。この先どう転ぶかわからないとは言え、取り敢えずは有り難い話ではある。

しかし、リーマンショックの後はほぼ断続的に好景気が続いた為にドイツは例年記録的な税収を得ることに成功した。私はそんな事が繰り返されるとはとても思えず、今回のコロナ禍のツケは必ず増税という形で帰ってくると思っている。

今年は取り敢えず、「連帯税」がほぼ廃止され、子供手当が上昇した。更には所得税の基本控除額が上がったので、結果として殆どの就労者の所得税率が若干下がった。一方で、新たに炭素税が導入されるが、総じて言えば、我々庶民にとっては税金は下がったと言える。しかし、今後はどのように転んでいくのか、我々庶民にとっても気になるところではある。

そこで、財務相のショルツが再びぶち上げているのが富裕税の導入である。つまり、今後は超大金持ちの資産に税金を課して、コロナ禍の負債を取り戻すと言うことである。富裕税は元々1997年までドイツに存在したが、ドイツの基本法に反すると判断され、それ以降は廃止された。もっとも、富裕税自体が根本的に否定された訳でははなく、不動産と金を同様に課税するのが不当であるとの判断だった。

また、ドイツは収入の格差は先進国の中では比較的小さいとされているが、資産の分配という事になるとかなり格差がある事が知られている。Tagesspiegelの記事によれば、ドイツの全資産の3分の2が上位10%の世帯に集中しており、更にその中でも上位5%がドイツの全資産の半分、トップの0,001%が全資産の6分の1を所有している。一方で下位の50%はドイツの全資産の僅か2,5%程度しか所有していない。

ショルツはどの程度課税する意向があるかは具体的には述べなかったが、仮にこのような超資産家に僅かでも課税すれば、我々のような庶民にチマチマ課税するよりも余程大量の税金を巻き上げる事が可能になる。

更に言えばリーマンショックの後に続いた好景気の際も、金持ちは更に金持ちになっただけで中間層から下は大した恩恵は無く、資産格差は傾向としては広がっているとされる。当然金持ちや大企業が得をした方が沢山の金が動くだろうから国の経済的には都合は良いのかも知れないが、正直なところ、私も以前のような馬鹿みたいな好景気にはウンザリというのが本音である。

もっとも、富裕税の導入はドイツの経済を支えている家族経営の企業に最も悪影響があるとされており、雇用や設備投資などに悪影響が出る事が懸念される。もちろん、それで景気が悪くなっても困る。

いずれにしても、この富裕税の再導入に関してはショルツが属するSPDが積極的に主張しており、今年の連邦議会選挙のテーマの一つになるだろう。因みに、ショルツはSPDが擁立した次期首相候補で、現在冴えないSPDの中でも非常に国民からの人気も高い。既に財務相という重要ポストに就いているが、今後も注目すべき政治家の一人である。