新型コロナで各国とも過去に例のない程の出費を強いられていることは想像に難くないが、ドイツでは国民に対し過去最大級の減税が実施された。それが、1991年以来導入されている旧東ドイツ復興のための「連帯税」の廃止である。これは現在のコロナ禍とは関係なく、以前から財務相であるオラフ・ショルツから予告されていたもので、遂にこれが今年から実現した。
この連帯税は特に低所得者でない限り、昨年まで所得税の5,5%の金額で毎月給料から差し引かれていた。これは仮に独身者で月3000ユーロの給料だった場合、およそ23ユーロ、月4000ユーロならば38ユーロにもなる。当然給料が高くくなればなるほど税金も高くなるので、人によっては結構な金額になる。
この度完全にこの連帯税が免除されるのは、独身者で年収が73000ユーロ、既婚者であれば151000ユーロ以下の国民となり、これは全体のおよそ9割に相当する。つまり、殆どの就労者は今年からは給料の手取りがそこそこ増える。ざっとオンラインで試してみたが、独身者で人によっては最大で年間920ユーロ程度、つまり日本円にして年間11万以上の税金が浮くことになる。
もともとこの連帯税は1991年ドイツ統一の翌年に、表向きは旧東ドイツ地域の復興のために導入されたが、当時ドイツはアメリカの為に第二次湾岸戦争の援助も負担せねばならず、こちらの意味合いが実は強かったとされる。当初は1991年から1992年までの1年限り、主に所得税の7,5%を支払うものだった。
しかし、1年限りという話も例によって有耶無耶になり、やはり旧東ドイツ地域の復興に更にお金が必要いう事になった。そして、1995年には連帯税は再び7,5%で、更に今度は期限なしで復活した。1998年に現在の5,5%に引き下げられたものの、おそらく決して景気も良い時期だったとは言えず、大きな国民の反発があったことは想像に難くない。
この度この減税が実施されたのは、2010年代の空前の好景気があったからに他ならない。因みに、今年は更に子供手当も子供ひとりあたり15ユーロ上昇したので、子供のいる家庭は若干だが更に手取り収入が増える。現在のコロナ禍で将来的には再び増税の憂き目に遭うだろうが、とりあえず頑張って国に税金を納めた結果、多少でも手取りが増えることは有難い話だと思っている。