景気が足踏みする一方、物価上昇はますます加熱している

今年の夏頃からあらゆる物品の価格が上がり始めた事はもはや誰もが実感している事だろう。この傾向は最近更に強まって10月の物価上昇率は昨年の同月と比較して4,5%も上がった。特に身近なところではガソリンなど滅茶苦茶高くなり、1リットル1,7€前後にまでなった。日本円にして220円になる。食料品なんかもかなり高くなった。

エネルギーやら食料品のような生活必需品が高くなっているから家計に直結してくる。コロナ禍で生活が苦しくなった庶民にこれでは厳しい。ストライキなども含めた労働組合の賃上げ活動がまた活発になるだろう。

ではこれだけ物価が上がっているのだから、景気はさぞかし良いのかと思いきや、そうでもない。政府の最新の予想によると今年の経済成長率は2,6%とになるとの事だ。4月の時点では3,5%だったので、結構な下方修正になる。普通ならもちろん高い成長率なんだろうが、パンデミックの後のV字回復を期待した割には物足りない。

この原因として最近顕著になってきているのが、あらゆるモノが不足していることである。最近はどこへ行っても何もかも売り切れ状態で、値段云々よりも欲しいものが見つかればラッキーという状況である。多分、ワクチンの普及などで需要が再び上がっている一方、コロナ禍から抜け出せていない発展途上国から減量を調達するのが難しくなっているからだ。

更にこの状況でも欧州中央銀行は長年続けている低金利政策を堅持する方針を明らかにしているので、少なくともこのインフレ傾向は多分しばらくは続く。というのもEU全体でみれば他国はドイツ程まだインフレは進んでおらず、もう少し様子を見ようという事だろう。欧州中央銀行が言うには、来年にはインフレも鈍化するとの事だ。

確かに、現在まだコロナ禍から抜け出せていない発展途上国にワクチンが普及して、通常の経済活動が取り戻されれば、最近のようなモノ不足は解消されるので、取り敢えず物価は落ち着くのかもしれない。当然景気も良くなる筈で、来年は4,1%の経済成長率が見込まれている。

しかし、肝心のエネルギー価格が今後下がるとは有り得ない。これから地球温暖化防止で、ガソリンなどは今後も間違いなく高くなるし、高くせざるを得ない。さもないと、温暖化防止など絵に描いた餅になる。

そしてもちろん、これで最も損をするのは郊外から車で通勤したり、旧式の暖房で安い賃貸住宅に住んでいる庶民である。仮に景気がよくなっても、こう言うのが重なって格差はどんどん広がっていくと言うものだ。新たな首相になる事が確実なSPDオラフ・ショルツのもと、SPD,Grüne,FDPの新政権がどのような政策を打ち出してくるのか、個人的に非常に注目している。このような状況の中政治の果たす役割は、とてつもなく大きいだろう。