ドイツで驚異的な人気を誇るハイテク調理マシン、テルモミックス

そして、まさにこの手の販売が日本では一部で悪徳商法と見なされ、間違いなく歓迎されない。もっとも本来なら複雑な機能を持った高額商品である以上、事前に十分に説明し、実際にテストする事は、不当なクレームや返品を防ぎ、長期間に渡り商品を満足して利用して貰う為に必要な事でもある。それを踏まえた上で、日本のカスタマーに合ったマーケティングの手法が必要になるだろう。

因みに、ドイツでこのホームパーティ販売での売上は業種を問わずここ10年で2倍になったと言われる。ネットの発達で顧客のニーズを把握するのが容易になったからだろう。私はこのようなホームパーティに参加した事はないが、もともと興味のある人に楽しんで貰いながら、商品のメリットを誠実に説明すれば、質の高い購買となり顧客も満足するという事だ。ネットショッピングが全盛の時代だが、一方で商品によってはクラシックかつ人間的な販売方法が再評価されつつある。

最後に、テルモミックスが日本で売れない理由として、やはりドイツ人と日本人の持っている元々の価値観の違いというものを指摘しておきたい。

あくまで私の印象では、ドイツ人は徹底的に効率を重視する。あらゆるものをシステム化、機械化し、限られた時間の中で最大限の効果を出そうとする。おそらくドイツ人にとっては料理が機械で作られたものか、手作業のものか、(日本人ほど)大した意味をなさない。短時間で、程々に美味しいものが出来上がればそれで良いのだ。テルモミックスは高いが、何年か使えば元は取れるし、なにより仕事の後のストレスが軽減できる上に、自宅でのパーティにも使える。トータルで見れば経済的にも、生活文化的にも大いに役立つと考える。

一方の日本人は、苦労して手間ひまかけた作業に対して非常に高い価値を見出す。少なくとも料理に関しては、機械で作られたものと手作りで作られたものでは、手作りのものが優れていると考えるだろう。私もそうだ。私はテルモミックスで作られた料理を食べた事は無いが、やはり上手な人であれば手料理の方が美味しいのではと考えているし、美味しくても機械で作ったと言われれば、なんか味が落ちた気分になる。実際にどこかのレストランのコックと、素人がテルモミックスを使って対決するビデオがあるが、やはり最終的には手料理の方が高い評価を得ている。

もちろん、これはあくまで傾向としての話で、大いに私の独断と偏見が入っている。ドイツ人でもテルモミックスを評価しない人もいるし、逆に日本人でもこのような機械を積極的に利用したいと考えている人はいる筈だ。

おそらく、ドイツの有名レストランもテルモミックスを使用している通り、あくまで一部の作業、或いは料理に関してはテルモミックスを使った方が人間の手よりも質が高い。機械ならば人間よりも多くの力を出し、更にそれを均一にしたり、正確にコントロールすることができるから当然だろう。もっとも、それに1200ユーロも投資するかどうかはまた別の話になる。

そして、このドイツで大人気で売り上げもウナギ登りだったテルモミックスであるが、2017年の売り上げはなんと国内でマイナス22%という意外な数字が出た。それまで毎年記録的な売り上げを叩き出していたので、その反動が出たのかもしれないが、もはや国内での成長は頭打ちになっているという見方もある。

フォアヴェルク社はこのような状況を踏まえてか、通常よりも短いサイクルで先週新型のモデルを発表した。価格は1359ユーロだ。しかし、これは予告なしに発売されたもので、直前に旧モデルを買った顧客からクレームが発生する事態になり、多くのメディアに取り上げられた。

また、国内での伸びがそれほど期待できない状況では、当然国外での販売に活路を見出す事になる。当然ながら大市場であるアメリカ、中国が主なターゲットだ。しかし、これもそれぞれの国の特有の商慣習、料理に対する文化などがある上に、大きなお金を投資をしなければならない。テルモミックスがこれらの海外で販売を継続できるほどの人気を獲得できるかは、まだ未知数だと言えるだろう。