SPD,Grüne,FDPの新政権で、ドイツはどう変わるのか

9月末の総選挙の結果を受け、現在は各党が政権構築に向けての話し合いを行なっている真っ最中である。これはドイツ語で”Sondierungsgespräch”と呼ばれており、公式な話し合いではないが、党同士お互いに政策に共通点を見出して連立政権への可能性を探るものだ。

今回はまず環境政党であるGrüneと経済リベラル政党であるFDPが真っ先に話し合いを行い、この両党が中道左派であるSPDと連立政権を組むという形で話が進んでいる。そして、余程のことがない限りこの話はまとまり、この3党による連立政権が近日中に発足するだろう。新首相はSPDのオラフ・ショルツで決まりだ。

そう言う訳で、少々気が早いのだが、私的にはこの3党の連立政権により我々の生活がどのように変わるのか気になる所でもある。とりあえず今わかっているポイントだけでも把握しておきたい。

まずは2038年に予定されている脱炭素社会の実現が、最短で2030年までに更に早まる可能性がある。これが実現可能かどうか勿論はなはだ疑問ではあるとは言え、地球温暖化問題はおそらく今後数年長期に渡り最大のテーマとなるのは間違いない。

この地球温暖化のテーマに関してはポピュリスト政党であるAfdを除けばどの政党も重視しており、二酸化炭素の削減はあらゆる政策の大前提でもある。これに環境政党であるGrüneが政権入りする事で温暖化抑止の為の政策が更に進められる事は明らかだ。

もっとも、長年議論されているアウトバーンの全土の速度制限に関しては今後も実施されない見込みである。これは自動車を電動化するなど、技術の進歩を促進する事で解決される方向のようだ。ここでは経済リベラルであるFDPの意向が強く働いていると思われる。

個人的に最も気になっているのが、財政面、税制面での変化であるが、これは金持ちから高い税金を巻き上げようとするSPDとGrüneに対し、FDPは基本的に減税を主張する政党であり、その主張は真っ向から対立する。

現在わかっている事は、SPDはかねてから主張していた富裕税の導入を諦め、今後も増税はしない事で合意している点だ。ここでもかなりFDPの意向が反映された感があるが、コロナ禍の経済的なダメージに加え、今後環境問題などで多くの投資が必要な事を考えれば、この約束を額面通りに受け取めることはできないだろう。

労働に関しては最低賃金が12ユーロに上昇する。現在は9,6ユーロなのでこれはもはや爆上がりになる。これはかねてからSPDの肝入りマニフェストの一つであり、額面通り見ればこれがそのまま通る形だ。

どんな仕事をしようが時給12ユーロ貰えるとは少々甘やかし過ぎの気もするが、これもここ数年の空前の好景気で格差が広がったところに、コロナの追い討ちがかかったことが大きい。一方これまで安い人件費で従業員をこき使っていた企業にとっては非常に厳しくなる。

その他は、選挙権の16歳への引き下げ、有能な外国人移民受け入れの推進、公的支援のある住居の建築、子供の権利の強化など、おおむねSPD、Grüneの政策が中心になってくる見込みである。

あくまで非公式な話し合いなのでこれらの政策が実現するかどうかは不明としても、とりあえず今後世の中がどのような方向へ動いていくか大まかな指針にはなる。少なくとも言える事は、今後数年は地球温暖化と同時に、富の分配がより重視される。成長に関しては、これまでドイツ経済を支えてきた自動車産業が斜陽になりつつある中、弱点と言われる社会のデジタル化が今後ますます推進されていくだろう。