ドイツ、苦戦するもルーマニアに逆転で勝利する

金曜日にカタールW杯予選のルーマニア戦がハンブルクで行われたので感想を記しておく。ドイツは新監督ハンジ・フリックが8月に就任して以降3連勝を飾っており、再び復活の兆しを見せている。FCバイエルンで用いた4-2-3-1のシステムに、およそのメンバーも固定している感がある。

ルーマニアとは既に3月にアウェーでの試合を済ませており、この時は1-0で辛勝した。おそらくグループ内では最も強敵となるだろう。

試合が始まるとドイツはいきなりラッキーなPKを一旦獲得するがこれがビデオ判定で取り消された。すると直後に左サイドをドリブルで突破され失点する。この日左サイドバックに入ったケーラーの甘い寄せに加え、最後はリューディガーが股を抜かれると言う失態で、これではGKのテア・シュテーゲンもなす術が無い。

この望外の先制点を得たルーマニアは例によって5バックで粛々と守備を固め始める。ボールキープするドイツは速いパス回しで崩そうと試みるが、良い形でペナルティエリアにボールが入らない。何せ大きくて強いFWがいないので、高いボールと言う選択肢が無いのは痛い。

もっとも、前半30分を過ぎると徐々にルーマニア陣内深い位置にボールが入るようになり、得点の雰囲気が徐々に感じられる。前半はこのまま1点ビハインドで終了した。

後半も依然としてドイツがボールキープする展開になるが、ルーマニアにやや疲れが見え始め徐々にスペースが出来始める。すると52分、左サイドを攻め込んだドイツはゴレツカ−ロイスとボールが中央へ動き、最後はニャブリがやや右からミドルシュートを突き刺さして同点に追いつく。この後は攻め込むドイツにルーマニアがカウンターで応酬するオープンな展開になった。

しかしドイツは82分、コーナーキックからニアサイドのゴレツカが頭で後方へ流し、ファーサイドで待ち構えていたミュラーがこれを押し込んで勝ち越した。この後は若干ヒヤリとするシーンもあったが、試合はこのまま2-1でドイツが逆転で勝利した。

ルーマニアは東欧のチームの例に漏れず、個々のテクニックが高く厄介な相手であり、更に速い時間帯に失点して難しい試合になった。しかし、最後に地力の差を見せつけて90分で逆転した事は素直に評価している。

特に最後、セットプレイで得点した事は非常に価値がある。得点を決めたミュラーは一旦ショートコーナーを受ける為外へ出ていたが、そこからさりげなくボールが転がり込むファーサイドに走り込んだ。この「何故かそこに居る」得点感覚こそミュラーの真骨頂である。

セットプレーに関しては前半にも外に走り込んだゴレツカに当てて、中央へ送るパターンを見せており、これも得点のチャンスになった。あのヨアヒム・レーヴ時代の全く箸にも棒にもかからない有様から、フリックに代わってこの点は早くも大きな進歩が見られる。また現在の陣容で群を抜いてヘディングが強いゴレツカは今後も重要人物になるだろう。

一方昨日の試合で見られた最大の課題はやはり大きくて強いFWが存在しない事だ。これは何年も前から言われている慢性的な問題とは言え、このFWの育成を長年怠ってきたツケは本当に大きいと思わざるを得ない。

更に昨日FWのヴェルナーは所属するチェルシーで干されているらしく、昨日の試合を見る限りそれも納得と思わざるを得ない出来だった。かと言って代わりになる本職のFWに誰がいるのかと言えば、誰も居ない。はっきり言って次のW杯までに世界に通用する新たなFWを発掘するのは困難なので、ハーヴァーツかミュラーあたりを再び苦肉の策でFW起用するのが現実的な解決策になる。

守備面は多少バタバタする場面も散見されたが、今のところレーヴ時代よりは明らかに安定しており、この点でも着実な進歩が見られる。これ迄を見て言える事は、レーヴのように3バックにしたからといって必ずしも守備が安定すると訳ではないと言う事だ。フリックは就任以降4バックのみを用いているが、明らかに連携が良くなった。

特に右サイドバックに抜擢された攻撃的MFホフマンはこれまでこの新たなポジションをソツなくこなしており、強豪国相手に通用できるかどうか期待されるところだろう。