ドイツ、キミッヒを起点とする攻撃でアイスランドに快勝する

昨日は来年のカタールW杯予選が開幕しドイツはアイスランドと対戦した。ドイツ代表は昨年ネーションズリーグの0-6の惨敗して以来の試合となる。既に監督であるヨアヒム・レーヴのEURO終了後の退任は決定しており、気を取り直して再スタートと行きたいところである。注目されたベテラン三人衆、ミュラー、ボアテング、フンメルスの再招集は見送られたが、元々メンバー自体が悪い訳ではない。簡単に試合の印象を述べておく。

ドイツは開始早々から攻め込み、いきなり3分に先制する。キミッヒが中央から絶妙のタイミングでゴール前に飛び出したニャブリにチップキックでパスを送る。ニャブリはこれを直ぐ後方に落とし、ゴレツカがこれを左足でダイレクトで決めた。FCバイエルンのコンビによる鮮やかな攻撃だ。

更に7分、左サイドを駆けるサネにこれもキミッヒが今度は低いスルーパスを送り、サネは深い位置からこれをマイナスに折り返すと、今度はこれをハーヴァーツが決めた。こちらも鮮やかな攻撃で、ヨアヒム・レーヴの表情も満足そうである。

ドイツは圧倒的にボールを支配し、ボールを奪われても前線で直ぐにボールを奪い返し、アイスランドに全く攻め手を与えない。特にキミッヒは攻撃の起点として数々の鮮やかなパスを通し、アイスランドの全パス数よりもキミッヒ一人のパス数が上回るという格の違いを見せつけた。

一度だけアイスランドのパワープレーであわや失点かと思われるシーンもあったが、全体的には非常に良い出来で前半は2−0で折り返した。

後半アイスランドは反撃にでるが、ドイツは56分にギュンドアンが右足でゴール左下へミドルシュートを決めて3−0とする。その後もドイツは前半よりややペースを落としながらも、概ね試合を支配しそのまま危なげない勝利を飾った。78分にはFCバイエルンの注目の若手ジャマル・ムジアラが17歳で代表デビューを飾っている。

全体的にはアイスランドが格下という事を差し引いても、ドイツは取り敢えず非常に良い試合を見せた。特に引いた相手に対して、複数の選手が絡む鮮やかなコンビネーションはまさにヨアヒム・レーヴが理想とする攻撃だと言える。

特にキミッヒのパスの精度、そしてその質に関してはもはや文句の付けようがない程の完成度を誇っており、その絶妙のタイミングで繰り出されるチップキックは相手にとって大いなる脅威になるだろう。FCバイエルンでの活躍も含め、ドイツではもはや別格の存在感になりつつある。

もっとも相手が強くなった場合、キミッヒは寧ろ守備で必要になる。現状余りにもドイツの守備がザルすぎるので、キミッヒはEURO本番で攻撃ばかりに精を出す訳にはいかないのが痛い。

もう一人私が個人的に注目していたのが、現在マンチェスター・シティで得点を量産し絶好調のギュンドアンである。あくまで私の目からみれば、このギュンドアンのテクニックはドイツの中では突出している。これに加えて現在の得点力があれば、クロースを差し置いてでもEURO本番でスタメンで起用すべきだろう。

昨日もこれまでになくワンツーからゴール前に飛び出すなどの積極的な動きが目についた。3点目となったミドルシュートも狭いスペースの中、鮮やかなボールコントロールと極めてコンパクトな振りから繰り出された見事なものだった。これまでにない、新たな境地に到達した事を窺わせる。

この他にも左サイドからのドリブルで脅威になったサネ、中央やや1.5列目で機能したハーヴァーツなど、多くの攻撃陣が良い動きを見せた。しかし、仮にミュラーが復帰した場合、最もポジションが被るのがハーヴァーツだ。世間のミュラー待望論も確かに大きく、今やレーヴもこの可能性を否定していないが、このどちらかがベンチとなるのは、かなり贅沢な攻撃陣になる。

まあ、もともとドイツの攻撃には私はそれほど心配していない。ハマればその破壊力はおそらくEURO出場国中トップクラスだろう。あくまで問題は守備だ。EUROで対戦する相手はアイスランドのレベルではなく、フランスとポルトガルである。そういう意味で、昨日の圧勝は参考にはならないと思った方が良いだろう。