2021年のドイツを象徴する言葉は“Wellenbrecher“

今年も年の瀬となり一年を振り返る時期に差し掛かってきた。例によってその年を象徴する言葉が発表されているので紹介したい。今年も昨年同様新型コロナ関連の言葉である”Wellenbrecher“が選定された。

“Wellen”とは「波」、”brechen”は英語の”break”なので「打ち砕く」、「断つ」などの意味があり、本来なら”Wellenbrecher”とは「防波堤」を意味する言葉である。辞書を引けばすぐに見つかるだろう。しかし、今回この言葉が選ばれたのはもちろん海の防波堤の意味では無い。

ここでの”Wellenbrecher”はロックダウンやワクチン接種など、コロナウィルスの「波」を断ち切る政策や対策、また、そのような対策を実行し立ち向かう人を意味している。ドイツ語でも日本語と同様コロナが流行すれば「第4波」などの「波」が使われており、これは感染者数のグラフがまさに波のように見えるからだろう。

因みに近々流行すると言われるオミクロン変異型の流行は「波」ではなく「壁」になると言われている。つまりこれまでに無い急激な感染者数の上昇が予想されると言う事である。

例によって新型コロナ関連の言葉が踊った一年だったが、2位以下も記しておく。

SolidAHRität : 本来は”Solidarität”で「連帯」を意味する単語だが、ここにドイツ西部にあるAHRと言う川の名前が入った造語である。この川は夏場に大洪水が起こり歴史的な大災害になった為、特にここでの救助活動や募金活動を通じた「連帯」を意味している。

Pflexit : “Brexit”や”Grexit”など同様、この場合は”Pflegekräfte”「介護職員」が”Exit”、つまり辞めていく事を意味している。過酷な労働条件で介護職員が不足している世相を表した言葉だ。

Impfpflicht : “Impfung”「ワクチン接種」と”Pflicht”「義務」の合成語、読んで字の如く新型コロナワクチン接種義務を意味している。

Ampelparteien :”Ampel”「信号」と”Partei”の合成語である。ここではドイツの新しい与党となるSPD(赤)、FDP(黄)、Grüne(緑)の3党を表しており、これはそれぞれの党の色が信号機と同じ事に由来している。

Lockdown-Kinder: 直訳すれば「ロックダウンの子供たち」となる。子供が家に閉じ込められた事で、家庭内の暴力やストレス増加などさまざまな問題が顕在化した事で発生した言葉だ。

Booster: 現在「ブースター」と言えば、新型コロナ追加接種だと誰もが理解するだろう。元々の意味は日本語と同じで機械などの力を増幅させる装置の事である。

freitesten : “frei”「自由な」と”testen”「テストする」が合体した分離動詞である。新型コロナルールの隔離生活を抜け出すには、しばしばテストで陰性を証明する事で自由な行動が可能になるが、このテストの実施を”freitesten”と呼ばれるようになった。

Triell : 1対1の対決を表す”Duell”(デュエル)の3人版である。メルケルの後を継ぐ首相候補となったSPDショルツ、CDUラシェット、Grüneベアボックの三者によるテレビ討論がしばしば”Das Triell”と呼ばれた。

fünf nach zwölf : 時刻12時5分を意味しており「既に時遅し」の意味となる。コロナ対策や環境問題でよく使用された。元々は”fünf vor zwölf”=11時55分(12時の5分前)で一刻を争う緊急事態の意味だったが、これが転じて出来た表現である。