2022年のドイツを最も象徴する言葉は“Zeitenwende“「時代の転換点」

かなり遅ればせになってしまったが、2022年のドイツを象徴する言葉が昨年12月に発表されたので今年も紹介しておく。今回は”Zeitenwende”と言う言葉になった。

“Zeiten”はここでは「時代」、”Wende”とは「転換」の意味であり、文字通り2022年は時代の転換点と言う事になる。これは首相であるオラフ・ショルツがロシアによるウクライナ侵攻を受けて国会での演説に使用した言葉だ。

ショルツはこの演説で同時に国防に1千億ユーロの特別資金を充て、更には今後国防費をGDPの2%以上まで引き上げる事を明らかにした。このような数字は専門家でもなければ誰も気にした事がないだろう。ただドイツが昨年以降自国の軍の増強に踏み切った事は歴史的な大転換と言われている。

鉄血宰相ビスマルクや第二次世界大戦のイメージからドイツはいかにも軍隊が強いイメージがあるが、GlobalFirepowerの軍事力ランキングではドイツは世界16位である。要するに、戦後ドイツは国防に関してはこれまで殆ど力を入れてこなかった。住んでいれば分かるが、この国の平和主義と暴力反対は徹底している。

戦後はもはや周辺諸国と戦争状態になる事はあり得ないどころか、安全保障に関してはNATOとして結託しており、ロシアに関してもお互い経済的なメリットが有れば、戦争を仕掛けてくる事は無いと踏んでいたのだろう。そうやってEUも大きくなり、ドイツは世界各国と取引を行い繁栄した国でもある。

しかし結局世界には話し合いなど全く通用しない国家が存在することをまざまざと見せ付けられた。本当に付き合う相手は選ぶべきだと痛感する。そのような相手とは距離を取り、手を出されないように自らが強くなるしか無い。

本当に平和ボケのドイツでは誰も本気でヨーロッパで再び戦争が起こるなど想定していなかった。それがいきなり核兵器が飛んでくるかも知れないような状況になり、第三次世界大戦まで発展し得る状況になった。

更にそれに伴ってインフレは10パーセントを超える歴史的な水準に達し、とりわけエネルギーに関しては価格の高騰はもちろん、そもそも供給自体が危機的な状況とまで言われた時期もあった。これまで当たり前だと思っていた事が次々と覆されたと言う意味でもまさしくZeitenwende、時代の転換点と言える年だろう。色んな意味でもはや2022年以前の世界は戻ってはこないと思っている。